ご挨拶Welcome

ご挨拶

令和5年12月16日(土)17日(日)に、第27回SST普及協会学術集会in金沢を石川県地場産業振興センター(金沢市)において開催することとなりました。この学術集会を主催するSST普及協会は、平成7年に設立され、平成26年に一般社団法人となりました。当協会は、SST(Social Skills Training:社会生活スキルトレーニング)の普及や技能向上、研究活動の促進を目的として、毎年全国集会を開催しています。今回は北陸支部と南関東支部とが協同して運営を担当することとなり、実行委員会を組織して準備を進めています。入院生活技能訓練療法が精神科を標榜している保険医療機関において入院加療者を対象として診療報酬化されたのは平成6年4月のことです。私が医師免許を取得したのも同じ年であり、今でも鮮明に記憶しています。何度も病棟で練習をした記憶があります。難しい理論から始まる治療ではなく、どのように買い物をするかなど、当事者の立場に立った介入で、「これは現実的だ」と、とても印象に残っています。現在では、精神科領域だけでなく、教育領域、就労支援関連領域、矯正教育及び更生保護領域、職場のメンタルヘルス(産業領域)、一般市民など、さまざまな領域で実践されています。また、家庭や職場への訪問など、地域生活者の現場での支援も行われています。
SSTは、人と人の間をテーマにしており、「あいだ」の著書で有名な木村敏先生の哲学的表現をするならば、「ノエシス」という事象を扱っています。対人関係における一回一回のセッションの中に、たいせつな事象があり、一回限りで再現ができない、まだまだ科学になじまないテーマですが、精神医学の本質に関わる内容です。木村敏先生に大きな影響を与えている哲学者、西田幾多郎先生が石川県出身であることを考えると、金沢で開催されることは感慨深いことです。
今回の学術集会のテーマは、「わかる、伝わる、つながるソーシャルスキル-SSTで新しい時代を拓こう」としています。学術集会における交流を通じて、わが国のSSTがさらに発展し、この社会で暮らすすべての人が、生活の質を高め、より希望の持てる未来へ向かうことのきっかけになれば、という実行委員一同の思いを込め、力を尽くして準備する所存ですので、ご期待いただきたいと思います。
勉強の合間には、北陸の山海の幸を堪能し、古都・金沢の雅にも触れていただきたいと思います。実行委員一同、SSTのベテランにも、またSSTにまだ馴染みのない初心者の方にも、有意義と感じていただける学術集会にしたいと願っております。

SST普及協会第27回学術集会in金沢
    大会長 菊知 充
(金沢大学精神行動科学講座教授)